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菅野美穂さんの「結婚しない」10話・最終話(11話)ネタバレ注意

第10話は録画したまま、視聴しないで第11話最終回をリアルタイムオンエアで視聴してしまった。第10話は後から再生視聴した。

●女優としての菅野美穂と、このドラマ その1

女優菅野美穂さんの仕事を、ファンとしてどれだけ褒めるかという点について言うと、このドラマに関しては私個人は、スランプ・飽和状態・倦怠期かもしれない。

ただ、菅野さんの魅力自体は、年齢とともにという部分と、それにもかかわらずとの、両方の意味において、容姿、人間性、両方とも衰えることを知らず、輝きを増しているとは思う。

とすると、このドラマでの菅野さんは、年齢にもかかわらず、これだけ可愛いということでもあるのだけど、私個人としては、輝きを増し続けているという感想と、このドラマの菅野美穂さんにはズレを少しばかり感じていて、それが、私の菅野さんファンとしてのスランプ・飽和状態・倦怠期感の原因かも知れない。

このドラマの菅野さん・千春の可愛らしさには、新旧、相当のファンがいるようでもあり、さらに菅野さんは、新しいファンを獲得していると思われるのではあるが、女優が可愛いにカムバックして、流石というのは、例えば、大竹しのぶさん、松坂慶子さん、黒木ひとみさんとかのご年齢であって、今の菅野さんのご年齢ではどうかなという気持ちが私にはあるのかも知れない。これは私が1958年生まれの54歳である保守的な感覚で、今の若い人達とは感覚が違うかも知れない。

●このドラマのテーマは何か 婚活で絶滅する本当の恋愛

ただドラマとしては、大変面白かった。恋愛ドラマでもあったと思うが、その恋愛ドラマとしては、どうだったろう。私は基本的にドラマはハッピーエンドで涙して心の浄化になるのが好きだ。恋愛ドラマでも基本そうである。恋愛ドラマでハッピーエンドでない場合は、その原因が社会悪・世間悪であって、それに対する義憤を感じさせるのが好きだ。とすると、このドラマはどうなんだろう。春子と教授に関しては、ハッピーエンドの恋愛ドラマと言って良いと思う。千春と純平に関してはどうなんだろう。千春と純平も将来は、春子と教授の様かつプラスアルファということで、ハッピーエンドと考えて良いのかも知れない。

しかし、このドラマ、結局、恋愛ドラマのハッピーエンドとしては、制度としての結婚というものを言わば否定して終わっているようでもある。婚姻届を折って紙飛行機にして飛ばしてしまうことに、それがあらわれている。同時に、結婚とは別の永遠の恋愛のあり方というものを例示しているのである。春子と教授の間において、そうであり、千春と純平の間の将来の予感としても、そうであるかも知れない。

結婚しない恋愛と言うのは、泡沫の恋であり、結婚によってお互いの愛が永遠(生涯)化するのだと言うのが漠然とした世間の恋愛観かもしれないが、このドラマは、永遠(生涯)化する恋愛において、結婚の必要性を否定している。必要性を否定としているというより、結婚、結婚へのこだわりが、むしろ永遠(生涯)化する恋愛を絶滅させてしまうと警鐘を放っているかのようなドラマでもあった。

少子高齢化・生涯独身化・出生率低下・成婚困難性などの日本の現代の問題を取り上げることから、このドラマは始まっている。主人公の千春は結婚願望とともに苦脳する。この苦脳にも、多くの視聴者の共感があったようだ。今、多くの日本の若者などの、結婚にこぎつけないことへの不安・孤独感・あせりを千春は一身に背負っていた。その環境が一層、若者達など日本人を恋愛よりも結婚相手の条件、自分の結婚相手としての条件へのこだわりへと追いつめていくのだ。

このドラマは、この結婚というものが現代の日本の適齢期、およびそれを過ぎつつある者に対して脅迫観念になりつつある状況とともに、そうであるがゆえに、そこで失われつつある、失ってはいけないものを訴えているとも言えよう。

男と女がつがって、生活し生殖していくことに、結婚・婚姻という制度をかぶせてきたのが、様々な国の歴史・文化でもある。そこには、様々な差別習慣や封建的価値観もあり、おおむね恋愛、わけてもプラトニック・敬愛の類は疎外されがちだった。現代人は、ここ最近、なんとか男と女がつがって、生活し生殖していくことに、プラトニック・敬愛の類を育てていくことを獲得しつつあったのだと言えよう。しかしながら、近年、日本においては、結婚適齢期のものたちが、成婚の困難性ゆえに、ここからの逆行性を感じるところでもある。ドラマ「結婚しない」はそんなことも感じさせるドラマでもあった。

このドラマの、男と女がつがって、生活していく上での恋愛・プラトニック・敬愛を守っていく上での、ひとつの戦略が、結婚しない、すなわち婚姻届を折って紙飛行機にして飛ばしてしまうことだったのかも知れない。ちょっと、ブライダル産業、真っ青の思想でもある。ブライダル産業・婚活産業に搾取されるなと言っているようなドラマでもある。

スポンサーのHISからすれば、旅行が新婚旅行で一生に一度なんてナンセンス、女が家庭に入って家に閉じこもっているなんてナンセンス、遠距離恋愛上等、婚前旅行上等、主婦の1人旅、熟年夫婦旅行上等ということかも知れない。あるいは、結婚しても共稼ぎで、女もビジネスで飛びまわれなのかも知れない。

確かに、女も男も、みんなが、ハッピーになるのは、こうした価値観の世の中ではないかという気もしてくる。

●千春と純平は絶滅種、破れ鍋に綴じ蓋

このドラマ、前半は、結構けしからん登場人物が多かったのだが、終わってみれば、終盤、みな善人、良い人ばかりだった。特に高原、わけても河野が、立派、善人でもある。なんで、こんな良い人間が、千春や純平に傷つけられなくちゃならないんだと言う気もしてくる。まあ、強いて言えば、高原、河野は、千春や純平なんかが気遣わなくても、ちゃんとやっていける、力強い、立派な善人なのだと言うこともできよう。河野は超人的に過ぎるところはあるが、きっと河野は歴史的にも芸術的に大成功すると思って合点しよう。常人ではないのだ。してみると、千春と純平は、相対的に破れ鍋に綴じ蓋ということでもある。この破れ鍋ぶりというのも、みんなのように、躓かないで要領良く生きていく、ということが上手でないという意味の破れ鍋である訳だ。ここに視聴者の共感もあるのであろう。

多くの共感者、それは適齢期前後の男女であろうかと思うが、そこには、みんなのように、躓かないで要領良く生きていく、ということが上手でない感が共有されているのかとも思う。では、みんなのように、躓かないで要領良く生きていくの、みんなと言えば、どんな、みんなのか?それはバブル経済を経験した世代、そこに至る道を歩んできた世代、およびその価値観を継承している者と言えるのではないだろうか? バブル経済を経験した世代、そこに至る道を歩んできた世代いうのは、誰でも、そこそこ、躓かないで要領良く生きて生きやすかったのである。自分が躓かないで要領良く生ことが難しいタイプであるか自覚する必要がなかった時代でもあったのだ。現代日本の適齢期前後の男女は、それが叶い難い時代に生きているのだ。こんな風にも考えさられるドラマだったように思える。

今の若い世代は、日本の未来は君達にあると、日本を取り戻せと脅迫されて、それを担えるのは誰かという選別ばかりが厳しくなって、先輩達がしてなかった苦労を担わせれ、あげく「結婚できない」に追い込まれているように思える。目をさまして、「結婚できない」から「結婚しない」に転じて、自信を取り戻せと言いたくもなってしまう。大切な何かを殺してまで、日本なんぞを取り戻す必要なんかない。

●千春とはどんなキャラなのか

ドラマの中でも、少なくない視聴者の間でも、千春は、人の良い、良い子であることになっている。ただ暗に春子も指摘しているように、困った子ちゃんでもある。私などの価値観からすれば、春子が思う以上に千春は困った子ちゃんでもある訳だ。千春は純真な良い子なのだが、純真でばかりでもいられない、いてはいけないと悩む中途半端な子でもある。凄いポピュリズムのダメダメな子でもあるのだ。春子がひっぱたいてしまう気持ちが良く判る気がするのである。「甘ったれるな!!」であろう。春子と千春は百合的でもあるが、世代間闘争的でもある。

実は、私は恋愛ドラマ・小説が苦手なのは、恋愛ドラマ・小説が低俗だと思いこんでいるのは、千春みたいな中途半端な人間が主人公で大きな顔して、視聴者・読者の共感を得ていること、このポピュリズムが嫌いなところにある。

そして、純平にもやや違ってはいても、千春的なダメダメ要素があるのである。

●女優としての菅野美穂と、このドラマ その2

このドラマ、役者陣みな、良い仕事をしていたと思う。言うまでもなく、主役・主要級の中では、天海 祐希さん、玉木宏くん、小市慢太郎さんは非の打ちどころがないと言って、私は良いと思うのである。多くの視聴者の評価としても、相変わらず菅野美穂さんの演技の評価も高いのだが、私は菅野さんに期待するところが大き過ぎるのか、どうもシックリこないところがあった。

これまでは、こんな難しい役、菅野さんじゃなきゃこなせないとか、こんな役でも、菅野さんだから、想像を超えたレベルで役に命を吹き込んでいると礼賛してきたのだが、どうも、このドラマに関してはしっくりこない面がある。

もしかしたら、菅野さんは千春を、人の良さを際立てさせる為にも衣装なども、もっとダサイ女として演じたかったのではなかろうか。ただ、そうだと、春子にひっぱたかれるような、ポピリュズム的ダメダメさが弱くなる。結構悩んだのかも知れない。千春はかなり難しい役なのである。

菅野さんは、みんなから愛される素のイメージがかなり浸透しているタイプの女優さんであると思う。様々な役を見事にこなして、素との見事なギャップをも、見せつけている。それでも、どうも私は、さすがの菅野さんでも、千春のプロファイルを完全には把握できないのではという思い込みがあるのかも知れない。だからいつものようには上手く、千春を演じきれていないのではという先入観を持ってこのドラマでの菅野さんの演技を観察してしまったかも知れない。やや芝居がかった菅野さんを意識してしまったのである。

菅野さんが分析しにくい組立にくい、いまどきの35歳が、どこにでもいる千春なのかとも思う。

近い内に観てみたい菅野さんの役。健康的な小悪魔として、人のやましいところを弄ぶような、キラキラした上目遣いに男の下心を覗きからかうような、ちょっと正義の、素に近い役を演じてもらって、仕事でリラックスしてもらえたらなぁと思う。本当はセーラ服のときに、存分にこれをやって欲しかった。オジサンの菅野さんに対するノスタルジーが強いのではあるが。それほどに菅野さんはハイスピードではあるが着実に進化しつつあるということでもある。

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